Japanische Klassiker mit Furigana
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みずのしたのいし
水の下の石
山本 周五郎
Lesen Sie 水の下の石 (みずのしたのいし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.791 Zeichen · 28 Bildschirme
めの声音にもそれが感じられた、若い牝鹿の鳴くような少し鼻にかかる声、怖れにふるえながら、けんめいに身の証しをたてようとする巧まない言葉つき、まだ震えのとまらないらしい、おどおどした態度にさえ、仮にも諜者などと疑えるところはみえなかった。小弥太は闇のなかにむすめの表情をさぐろうとしたが、まだとし若そうなまる顔のかたちだけはわかるけれど、塗りこめたような暗さで眼鼻だちもはっきりとは見わけられなかった。「……そのわけをいまの二人に話したか」「申上げようと思ったのですけれどあんまり怖ろしくて、舌が硬ばってしまいまして、どうしても……」「原へゆく道は大丈夫なんだな」「はい……」小弥太は頷きながら去っていった隊列のほうへ眼をやった、それからつと刀の柄に手をかけて「ゆけ」と囁いた、「……こんど捉まると助からないぞ、ゆけ」そう云いながら刀を抜いた、その刃の光りのおそろしさが力を与えたのだろう、むすめはあっと叫んではね起き、夢中でうしろの藪の中へ転げこんだ、小弥太は刀を右手にさげたまま、むすめが藪をかきわけてゆく物音をじっと聞きすましていた。