Japanische Klassiker mit Furigana
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すいがいざつろく
水害雑録
伊藤 左千夫
Lesen Sie 水害雑録 (すいがいざつろく) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.302 Zeichen · 25 Bildschirme
やがて自分は路傍の人と別れるように、その荒廃の跡を見捨てて去った。水を恐れて連夜眠れなかった自分と、今の平気な自分と、何の為にしかるかを考えもしなかった。
家族の逃げて行った二階は七畳ばかりの一室であった。その家の人々の外に他よりも四、五人逃げて来ておった。七畳の室に二十余人、その間に幼いもの三人ばかりを寝せてしまえば、他の人々はただ膝と膝を突合せて坐しおるのである。
罪に触れた者が捕縛を恐れて逃げ隠れしてる内は、一刻も精神の休まる時が無く、夜も安くは眠られないが、いよいよ捕えられて獄中の人となってしまえば、気も安く心も暢びて、愉快に熟睡されると聞くが、自分の今夜の状態はそれに等しいのであるが、将来の事はまだ考える余裕も無い、煩悶苦悩決せんとして決し得なかった問題が解決してしまった自分は、この数日来に無い、心安い熟睡を遂げた。頭を曲げ手足を縮め海老のごとき状態に困臥しながら、なお気安く心地爽かに眠り得た。数日来の苦悩は跡形も無く消え去った。ために体内新たな活動力を得たごとくに思われたのである。
実際の状況はと見れば、僅かに人畜の生命を保ち得たのに過ぎないのであるが、敵の襲撃があくまで深酷を極めているから、自分の反抗心も極度に興奮せぬ訳にゆかないのであろう。