Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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すいま

水魔

田中 貢太郎

Lesen Sie 水魔 (すいま) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.727 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

と、岩本も小声で云った。

「先方からお出でなすったら、しかたがないじゃないか」

「春になっても留置場は寒いよ」

「どういたしまして、燃えるような緋縮緬の夜着がありますよ」二人の洋盃にビールが無くなっているので、山西はかわりを注文して、それに口を浸けながら、「もう十日待てよ、羨しいところを見せてやるから」

「そんなことを云うが、ほんとうかい」山西の話が平生の話と違っているので、岩本はおひゃらかしをやめて来た。

「ほんとうとも」

「じゃ映画の説明をしてもらいたいな」

二人はビールに咽喉を潤しながら夢中になって女のことを話した。この二人は浅草公園を徘徊する不良の徒で、岩本は千束町に住んで活動写真の広告のビラを貼るのが商売、山西は馬道の床屋の伜であった。

次第に客がたて込んで二人の食卓にも洋服を着た客が来た。岩本はそれに気が注いて、体をねじ向けて帳場の上の柱にかかった八角時計に眼をやった。

「や、もう十時半になった、出かける処がある」

「網を張ってるのは、どの方角だい」

「今晩は商用だよ」と云って、にやりと面疽のある口元で笑って、帽子をなおしながら、「ありがとう」

岩本が出て往くと、山西は給仕女を呼んでビール代を払って、そこを出ようとしたが、入口に垂れた青い帷をかかげながら、観音堂の裏手で投げ込んだ手紙のことを浮かべて、あの女は