Japanische Klassiker mit Furigana
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みずとりてい
水鳥亭
Lesen Sie 水鳥亭 (みずとりてい) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.705 Zeichen · 62 Bildschirme
どこにも夢なんて、ありゃしない」
「克子は夢がないのかね」
亮作の言葉は穏やかであったが、例の弱々しく執念深い抵抗が、すくんだと見せて小さなカマクビをもたげているのである。
克子は軽く舌打して、その小さなカマクビを払い落した。
「軽蔑されるの、当然だわね。私たちの年齢に夢がない人あって? お父さんの年齢で、試験にパスする夢なんて、よくよくだわね。再来年は、私でも中等教員の免状もらえるのにね。中等教員になりたいなんて、思いもしないけどね」
克子の述懐に底意はなかったようだが、亮作のカマクビはうち砕かれて、抵抗も言葉も失ってしまった。
どうしても本だけは疎開しようと亮作は思った。それだけが二人の女に抵抗する手段のように思われた。本に対するやみがたい愛惜もたしかであった。
ひねもす本のことだけが気にかかる。
「社長におねがいがあるのですが」
と、亮作は野口にたのんだ。
「実は、疎開のことですが」
「疎開なさるんですか。結構ですね。早いが勝ですよ。どちらへ?」
「いえ、それがね」
「奥さんの伯母さんの所でしょう。大変なお金持だそうですね。羨しいですよ。こッちへも少し分けて下さい」