Japanische Klassiker mit Furigana
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ひょうが
氷河
黒島 伝治
Lesen Sie 氷河 (ひょうが) von 黒島 伝治 (くろしまでんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.824 Zeichen · 42 Bildschirme
……
七
鈴をつけた二十台ばかりの馬橇が、院庭に横づけに並んでいた。負傷者の携帯品は病室から橇へ運ばれた。銃も、背嚢も、実弾の這入っている弾薬盒も浦潮まで持って行くだけであとは必要がなくなるのだ。とうとう本当にいのちを拾ったのだ。
外は、砂のような雪が斜にさら/\とんでいた。日曜日に働かなければならない不服を、のどの奥へ呑み下して、看護卒は、営内靴で廊下や病室をがた/\とびまわった。
「さあ、乗れ、乗れ!」護送に行く看護長が廊下から叫ぶと、防寒服で丸くなった傷病者がごろ/\靴を引きずって出てきた。
橇には、五人ずつ、或は六人ずつ塒にかたまる鶏のように防寒服の毛で寒い隙間を埋めて乗りこんだ。歩けない者は、看護卒の肩にすがり、又は、担架にのせられて運んで行かれた。久しい間の空気のこもった病室から院庭へ出ると、圧縮された胸がすが/\しく拡がるようだ。病院へつれて来られる時には、うつゝで、苦痛ばかりを意識しながら登ってきた丘に、今、さら/\と快よい雪が降っている。
雪のかゝらない軒庇から負傷者が乗りこむのを見ていた看護長は、
「何だ? 何だ?」
と、息せき/\這入ってきた聯隊の伝令に云った。