Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あせ

汗

岡本 かの子

Lesen Sie 汗 (あせ) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.466 Zeichen · 3 Bildschirme

Aozora Bunko

松崎は婿の候補者というわけではなかった。評判を聞きつけて面白半分娘見物に来たのだった。松崎は鮎釣が好きだったところからそれをかこつけに同業の伯父から紹介状を貰って河内屋に泊り込んでいた。X町のそばには鮎のいる瀬川が流れて季節の間は相当賑った。松崎は工科出の健康な青年で秋口から東北の鉱山へ勤める就職口も定まっていた。

もはや婿養子の望みも絶った親たちはせめて将来自分一人で用を足せるようにと浦子に日常のやさしい生活事務をボツボツ教え込むことに努力を向けかえていた。

松崎の来るすこし前ごろから浦子は毎日母親から金を渡されて一人で町へ買物に行く稽古をさせられていた。

庭には藤が咲き重っていた。築山を繞って覗かれる花畑にはジキタリスの細い頸の花が夢の焔のように冷たくいく筋もゆらめいていた。早出の蚊を食おうとぬるい水にもんどり打つ池の真鯉――なやましく藹たけき六月の夕だ。

松崎は小早く川から上って縁側で道具の仕末をしていた。釣って来た若鮎の噎るような匂いが夕闇に泌みていた。そこへ浦子が

――お金が汗をかいたわ」

といって帰って来た。

――松崎さん。こんなお金でおしおせん買えて?」