Japanische Klassiker mit Furigana
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なんじじしんをしれ
汝自身を知れ
辰野 隆
Lesen Sie 汝自身を知れ (なんじじしんをしれ) von 辰野 隆 (たつのゆたか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.595 Zeichen · 4 Bildschirme
大正十年の七月、或日の午後、僕は山田珠樹と並んでスイス、ベルンの街をぶらぶら歩いていた。スイスに来て時計を買うのも少々月並すぎる話だが、モン・ブランやユングフラウに登って涼むのも、時計屋をひやかすのも、大した変りはないと思ったので、二人は互に第一流の時計屋らしいのを物色して、何か変った時計があったら――ふところと相談しておみやげに買って帰るつもりであった。
とあるショー・ウインドーの前に来ると、二人は申合せたように足を停めた。大小の時計が硝子窓の向側に手際よく列べられている中に、唯一つ嬰児の拳ほどの、銀製の髑髏が僕等に向って硝子越しに嗤っていた。
「おい、あれ時計かね、それともただの装飾品だろうか」と山田は好奇の目をった。
「時計なら買うのか」と僕は問い返した。山田が勿論と答えた時には、僕も時計なら買う決心をしていたのだった。
二人は店に入って、店員に訊ねて見た。店員は飾り窓に置いてあった銀の髑髏を手に取りあげて、髑髏の口を開いて見せた。開いた口の中には時計が箝め込んであった。白い盤面の、普通ならロンジンとかウォルサムとかあるべき場所にはハムレットという銘があった。