Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
自分と八橋と籠釣瓶と、この三つはどうしても引き放すことの出来ない約束になっているらしくも思われた。八橋とも別れたくない、籠釣瓶とも別れたくない。それを煎じ詰めて考えていると、彼はとうとう最後の結論に到着した。
「籠釣瓶で八橋を殺して、自分も籠釣瓶を抱いて死ぬ。これよりほかに途はない」
重荷を卸したようにほっとして、彼はもう一度その刀をつくづく眺めた。やがて刀を鞘に納めて、女中を呼んで硯と巻紙とを取り寄せた。彼は姉と親類とに宛てた手紙を書き始めた。書いてしまった頃に、ちょうど午飯の膳を運んで来たので、彼はいつもの通りに酒を注文した。酔うと寝床へもぐり込んで、昼から夜までぐっすりと寝てしまった。
あくる日も雨が降っていた。
「毎日降って困りますね」
佐野屋の入り口へ治六が寂しそうな顔を出した。
「治六さん。しばらく見えなさらなかったね。どうかしなすったか」と、帳場にいる亭主が宿帳をつけている筆をおいて訊いた。
「はい。少し風邪を引きまして、つい御無沙汰をいたしました」
三日目に一度ぐらいずつは必ずそっと訪ねて来て、主人の安否を蔭ながら訊いてゆく治六が小半月ばかりも顔を見せないので、亭主も内々心配しているところであった。