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Japanische Klassiker mit Furigana

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かごつるべ

江戸情話集

岡本 綺堂

Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme

Aozora Bunko

いっそ不意に斬り殺してしまおうと思案を変えて、なにげない眼は碁盤の上に配っていながらも、張り詰めた心は相手の隙ばかりを狙っていた。

叔父にも思惑がある。甥にも思う事がある。二人の打つ石はしどろであった。そばに観ている者があっては気が散っていけないと言って、五郎三郎は何かの邪魔になるお縫や三左衛門を追い払ってしまった。力のない石の音はしずかな部屋のなかに暫くひびいていた。

「これはだいぶ暑くなって来た」

五郎三郎は羽織を脱いだ。その途端に、自分の膝のそばに引き寄せてある長い刀の柄に眼が触れると、彼はぞっとした。これで眼の前にいる肉親の甥を切るのかと思うと、彼の胸は俄かに大きい波を打って、盤の上はぼうと暗くなった。石を取る指さきもおのずと顫われた。

殺すのも余り無慈悲だ、もう一度考え直して見ようと、五郎三郎は張り詰めた心が少しゆるんだ。彼は手を鳴らしてお縫を呼んで、もう一杯くれと茶を所望した。それから手拭を取り出して気味の悪い腋の下の冷汗を拭いた。

そのあいだ、外記はうっとりとした眼をあげて黙って天井を眺めていた。何かに気を取られて、魂はうつろになっているような其のとろけた眼づかいが、五郎三郎の気に入らなかった。