Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
「そりゃあ陽気のせいじゃありますまい」と、地弾きらしい年増の女が隅の方から忌に笑いながら口を出した。「向柳原はどうしたのか、この二、三日見えないようですね」
「二、三日どころか、八月にはいってからは、碌に寄り付きゃあしないのさ、畜生、憶えているがいい」
お絹は眼にみえない相手を罵るように呟いた。金地に紅い大きい花を毒々しく描いてある舞台持ちの扇で、彼女は傍にある箱を焦れったそうにとんとんと叩くと、箱の小さい穴から青い頭の蛇がぬるぬると首を出した。
「畜生、お前の出る幕じゃあないんだよ」
扇で頭を一つ叩かれて、蛇はおとなしく首をすくめて、もとの穴に隠れてしまった。
「八つあたりね、可哀そうに……。ずいぶん邪慳だこと」と、若い女が笑った。
「あたしは邪慳さ。おまけにこの頃は癇が起ってじりじりしているから、たれかれの遠慮はないんだよ」と、お絹は扇で又もやその箱を強く叩いたが、蛇はもう懲りたと見えて、今度は首を出さなかった。
「お察し申しますよ」と、年増はすこし阿諛るようにしみじみ言った。「向柳原はほんとうにどうしたんでしょう。まったく不実ですね。そんな義理じゃないでしょうが……」