Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
「よけいなお世話だが、早くしっかりした婿でも貰ったらよさそうなもんだが……」と、林之助は慰めるように言った。
「なんにも株家督があるじゃなし、なんでわたくしどものような貧乏人のところへ婿や養子に来る者があるもんですか」と、お里はさびしく笑った。「自分ひとりならば、いっそ堅気の御奉公にでも出ますけれど、母を見送らないうちはそうもまいりません」
お里の声は湿んできこえたので、林之助はそっと横顔を覗いてみると、彼女は月の光りから顔をそむけて袖のさきで眼がしらを拭いているらしかった。おとなしい林之助の眼にはそれがいじらしく悲しく見えた。そうして、こういう哀れな娘を呪っているお絹の狂人染みた妬みが腹立たしいようにも思われて来た。
不二屋へ毎晩はいり込む客の八分通りは皆んなこのお里を的にしているのであるが、彼女がこうした悲しい寂しい思いに沈んでいることは恐らく夢にも知るまい。現に自分を誘ってゆく諸屋敷の若侍たちも「どうだ、いい旦那を世話してやろうか」などと時どきからかっている。自分も毒にならない程度の冗談をいっている。お里は丸い顔に可愛らしいえくぼをみせて、いい加減に相手になっている。