Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
なるほど道楽者だけに話も面白い。すべての取りまわしも野暮ではない。しかしその野暮でないのをひけらかすような処に、お絹には堪まらないほど不快の点が多かった。しょせん彼の胸には、色の恋のと名づけられるような可愛らしいものを持っているのではない。単に一種の変り物を賞翫するような心持ちで自分をもてあそぼうというに過ぎないことも、お絹にはよく見透かされた。
女中たちに対する不平と、千次郎に対する不快と、この二つがお絹を駆ってしたたかに酒を飲ませた。彼女は大蛇のように息もつかずに飲んだ。そばに観ているお花は、だんだんに蒼ざめてゆく彼女の顔色に少しく不安を懐いて来た。
「あの、お前さん。あんまり飲むと毒ですよ」
「いくら飲んだっていいよ。あたしが飲むんじゃないから」と、眼付きのいよいよ悽愴くなって来たお絹は、左の手には杯を持ちながら、右の手で袂をいじっていた。
それを見てお花はいよいよ不安に思った。
もしやさっきのお此の二の舞をここで演るつもりではあるまいかと、彼女は少しいざり出てお絹の楯になった。よもやここまで蛇を連れて来る筈もあるまいと思いながら、彼女はそっとお絹の袂を探ろうとすると、お絹は眼をひからせてその手を強く叩きのけた。