Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
このあいだのように舞台で倒れるようなことがあっては大変だとみんなも心配して、中入り前に家へ送って帰したが、それから続いて気分もすぐれないで、きょうもとうとう休むことになった。折角の書入れ日に雨は降る、姐さんには休まれる、いやいや散々ですと、楽屋番の豊吉がこぼし抜いていた。
「まあ、一服おあがんなさいまし」
豊吉に煙草盆を出され、林之助も直ぐには起たれなかった。殊に楽屋じゅうの者ともみんな顔を識り合っているので、彼はしめっぽい座蒲団の上に片膝をおろして、煙草をすいながら二言三言つまらないことを話していた。豊吉を除いて、ほかの女たちはさすがにそれぞれ小綺麗な単衣を着ていたが、それでもめっきり涼しくなったと寂しそうに言うかれらの顔の上には、だんだんに冬に近づくのを悲しむような薄暗い色が浮かんでいた。昼でも楽屋の隅には痩せた蚊が唸っていた。
「ごめんなさい」と、お花は林之助に会釈して舞台へ出て行った。出るときに豊吉を見返って、火鉢の大薬罐を頤でさした。
「あたしの引っ込んで来るまでに、よく沸かして置いて頂戴よ。からだを拭くんだから」
「あい、あい」
「姐さんがいないと思って乙う幅を利かすね」