Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
林之助は黙って煙草をのみながら、渋団扇で火を煽いでいるお君の小さい手さきを唯ぼんやりと眺めていた。やがて鍋の蓋がごとごとおどると、強い匂いを含んだ薬のけむりが靡くように林之助の袖に白く流れた。お里の家にもこんな匂いが漂っているか、それとも線香のけむりが舞っているかと思うと、どっちを向いても涙を誘われることが多かった。
林之助はことしの秋のわびしさに堪えられなかった。
十二
薬が煎じつまったので、お君はお絹を起しに行った。そっと揺り起されて、お絹は眼をとじたままで訊いた。
「林さん。まだそこにいるの」
林之助はぎょっとして見返った。
「あたし、何だかうつつのように林さんが枕もとにいると思ったけれども、夢だったかしら」と、お絹は言った。
林さんはさっきから来ているとお君が言うと、お絹は初めて眼をあいた。林之助も起って枕もとへ行った。
「やっぱり来ていたのね。どうもそうらしいと思った」と、お絹はさびしくほほえんだ。「もうお前さん、来てくれやしまいと思ったのに……」
「冗談いっちゃいけない。いつも言うようだが、屋敷の方にも御用が多いので、夜でも昼でも勝手に出るという訳には行かねえからね。