Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
隣りのお婆さんもこの間に家の用を片付けて来たいといって帰った。
お絹の枕もとにはお君が一人さびしそうに坐っていたが、ことし十五で外の恋しい彼女は、やがて病人の寝息をうかがって、音のしないように格子をあけて、そこから半身を出して何を見るともなしに表を覗くと、長い往来は露地の幅だけに明るく見えて、そこにはいろいろの秋の姿をした人が廻り燈籠のように通った。を売る声もきこえた。赤とんぼを追いまわる子供の黐竿も見えた。お君はうっとりとそれを眺めていると、内からお絹の弱い声が聞えた。
「君ちゃん、君ちゃん。いないの」
「はい」
はっきりと返事をして、お君はあたふたと内へ駈け込むと、お絹はいつか眼を醒ましていて、薬をのませてくれと言った。まだ少し早いと思ったが、お君はすぐに薬鍋を温めにかかった。粥をたべるかと訊いたら、お絹は黙って首を振った。
托鉢の坊主が門に立って鉦を叩いたので、お君は出て行って一文やった。薬が煮つまって枕もとへ持ってゆくと、お絹は苦しそうにひと口すすったが、それはほんの喉を湿すに過ぎないらしかった。
「君ちゃん。あたし少しお前に言って置きたいこともあり、頼んで置きたいこともあるんだよ」