Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
栄之丞も承知した。約束さえ決めて置けば一日ぐらいはどうでも構わないと言った。それにしても気が急くので、お光は夜業で裁縫に取りかかった。
――心弱しや白真弓、ゆん手にあるは我が子ぞと、思い切りつつ親心の、闇打ちにうつつなき、わが子を夢となしにけり――
栄之丞は柱に倚りかかって、小声で仲光を謡っていた。寒そうな風が吹いて通った。堤へ急ぐらしい駕籠屋の掛け声がきこえた。うす暗い行燈の片明かりをたよりとして、お光はしきりに針を急がせていた。
今の栄之丞には妹に春着を買ってやるような余裕はなかった。お光がいま縫っているのは、先月の末に八橋から送ってよこしたものであった。八橋はお光も識っていた。栄之丞の妹といえば自分の妹も同様であるというので、彼女は今までにもお光にいろいろの物を送ってくれた。くるわの年季があければ八橋は自分の姉になるものとお光も思っていた。粗末ではあるが春着にでもと送ってくれた一反の山繭が、丁度お目見得の晴着となったのであった。いくら奉公でも若い女が着のみ着のままでは目見得にも行かれない。これもみんな八橋のお庇であると、お光は今更のように有難がっていた。