Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
「お染。聞いていたのか」
お染はそこに泣き伏してしまった。
「市之助はおれに隠れろと言う。しかし半九郎にそんなうしろ暗いことは出来ぬ。正直に今ここで切腹する。若松屋のお染の客は人殺しとあすは世上に謳われて、お身も肩身が狭かろうが、これも因果だ。堪忍してくれ」
「あの、わたしも一緒に死なして下さりませ」と、彼女は涙をすすりながら言った。
「いや、それは無分別。由ない義理を立てすごして、この半九郎に命までもくれようとは、親姉妹の嘆きも思わぬか。おれには死ぬだけの罪がある。お前には何の係り合いもないことだ。知らぬていにして早く彼方へゆけ」と、半九郎は小声で叱った。
叱られても彼女は動かなかった。不仕合せな女に生まれながら、自分はお前というものに取りすがって、今日までこうして生きていたのである。そのお前にいよいよ別れる日が近づいて、自分の心はとうから死んだも同様であった。日本じゅうに二人とない、頼もしい人に引き分かれて、これから先の長い勤め奉公をとても辛抱の出来るものではない。店出しの宵からお前の揚げ詰めで、ほかの客を迎えたことのないわたしは、どこまでもお前ひとりを夫として、清い女の一生を送りたいと思っている。