Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
もうこうなったら貴様なんぞに用はねえ、身請けの相談もなんにも頼まねえ。そんな面は見たくもねえから、早くけえれ」
次郎左衛門はつづけて呶鳴りつけた。彼の濃い眉は毛虫のようにうねって、その大きい眼は火のように燃えていた。この怒れる獅子に対して、栄之丞は哀れな小兎であったが、それでも彼は一生懸命に言い訳をしようと努めた。
「それは思いも寄らない儀で、私があなたを闇撃ちにしようとしたなどとは……。夢にも憶えのないことで、それは大方人違いかと……」
次郎左衛門はただ黙ってあざ笑っていた。
「さような御無体を申し掛けられましては……」
「よし、よし。もうなんにも言うことはねえ。こっちでももう聴かねえから、黙ってけえれ。ただひとこと言って聞かして置くが、八橋はもう貴様の起請を灰にしてしまったぞ」
今度は栄之丞の方が蒼くなった。膝の上についている彼の指さきはぶるぶると顫えた。いかに遠ざかろうとしている女の前でも、自分の競争者の口からこの残酷な宣告を受けては、栄之丞の素直な心にも相当の弾力をもたなければならなかった。彼は正面の敵から眼をそらして、斜に女の方を見かえると、八橋は俯向いてなんにも言わなかった。