Japanische Klassiker mit Furigana
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きてき
汽笛
佐左木 俊郎
Lesen Sie 汽笛 (きてき) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.469 Zeichen · 10 Bildschirme
改札孫の柴田貞吉は一昼夜の勤務から解かれて交代の者に鋏を渡した。朝の八時だった。彼は線路伝いに信号所の横を自宅へ急いだ。
「おーい! 馬鹿に急いで帰るなあ」
信号所の中から声をかけたのは彼と同じ囲いの官舎にいる西村だった。彼は振り返って微笑んだ。突然で言葉が出なかったのだ。
「細君はどうなんだ? 幾分かはいいのか?」
「同じことですね。起きてはいますけれど……」
「起きてるのなら、散歩にでも連れて出てみるんだな。あんまり家の中にばかりいるのも、身体のためじゃないぜ」
西村はそう言いながら転轍機の傍へ近付いて行った。
「今夜は七時の交代でしょう? 早く帰って闘球をしに来ませんか? 西村さん」
貞吉は、頭の中で、自身の若い細君をどうして悦ばせたらいいかと、そればかり考えているのだった。
「行くがね。しかし君のところの細君は闘球盤なんか絶対に駄目だよ。あんな屈んで胸を圧迫するようなことは全然いけないね。まあ今日は昼のうちに散歩に連れて行きたまえ。悪いことは言わないから」
西村はまた次の信号に掛からねばならなかった。
「え。連れて行くつもりなんです」
貞吉は子供らしい動作で軌条の上を歩き出した。