Japanische Klassiker mit Furigana
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きてき
汽笛
佐左木 俊郎
Lesen Sie 汽笛 (きてき) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.469 Zeichen · 10 Bildschirme
私の方でだけでも、お父さんの汽笛を聞いていられたのに……」
彼女は眼を潤ませてその言葉を繰り返した。弱い苦しそうな声で、そして力のない咳をした。貞吉も同意見らしく何も言わなかった。
「いや、こっちへ来ないんだろう。僕の考えでは、むしろ喜んでいて、今に汽笛を鳴らして通ると思うな。和睦の汽笛を」
傍からいつもこう言うのは信号係の西村だけだった。西村は秋子を慰めようとするのだった。
「汽笛どころか、今に会いに来るよ。怒るときには怒っても、親じゃないか」
「私、逢いに来てくれなくてもいいから、許してだけくれるといいんだわ。私だって、親から許された柴田の妻で死にたいわ。許した証拠に、汽笛だけでも鳴らしてくれると……」
彼女は、そうして湧き出る涙を拭く力さえも失っていた。黒い幕は目前に近付いている気がするのだった。
「死んで行く者を、許してくれたっていいと思うわ。今になって、私の方で、折れるわけにはいかないじゃないの」
秋子は恨みがましく呟くのだった。貞吉は無言で傍から彼女の涙を拭ってやるのだった。
遠方信号が赤だった。吉川機関手は眼をむいて拡大鏡から前方を見詰めた。