Japanische Klassiker mit Furigana
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きてき
汽笛
佐左木 俊郎
Lesen Sie 汽笛 (きてき) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.469 Zeichen · 10 Bildschirme
「お父さん!」
喜悦に満ちた力いっぱいの震えを帯びた声だ。
汽笛だ! 三度目を吼えた機関車は、唸るような余韻を別れの挨拶のように引いたのだった。
「あなた! あなた!」
秋子は貞吉の胸に飛び付いた。彼は彼女を固く抱擁した。彼女の眼は濡れてぎらぎらと光っていた。
「おい! 秋ちゃん!」
彼は彼女の身体に重さを感じて叫んだ。彼は素早く、彼女を白い敷布の上に戻した。しかしもはや彼女の脈は絶えていた。興奮状態からの微かな体温を残して。
機関車が過ぎ客車が掠めて行った。明るい窓の行列。機関車のビストンの音は客車の軌条を噛む音に掻き消された。
西村は信号所の窓から首を出して寂しく微笑した。
「おい! ねぼけていちゃ駄目だぜ」
優しい錆のある声が列車の轟音の消えた中にいつまでも残っていた。
西村は時間の経つにつれて次第に寂しくなって行った。彼の意識の中に築きかけられた美しいものが、吉川機関手の一言で崩されてしまったのだった。あの優しい声は確かに彼の秘密を覗破っているようだった。彼は同時に、秋子が、完全に柴田貞吉の妻であると意識を持つであろうことにも、ある一種の寂しさを感じた。