Japanische Klassiker mit Furigana
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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
Lesen Sie 沙漠の古都 (さばくのこと) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.076 Zeichen · 220 Bildschirme
私を乗せて来た自動車は、どこへ行ったか影もない。よしまたそこにいたにしても、この暗さでは解るまい。涯てしも知れない真の闇が、恐怖を知らない私の心を、ようやく乱すように思われて来た。私はどんなに陽の光と、人間の声とに憧れたことか! 私は戦慄を感じながら根強く闇に立っていた。すると、意外にも、幽かではあるが、薔薇色の火光がどこからともなく、流れて来るのに気がついた。私はあたりを見廻した。何んという不可解のことだろう! ほんの今までは闇であった私の足もとの地の上に、一間足らずの円い穴が、薔薇色の光を吐きながら、口をひらいているではないか。好奇心に駆られて私の胸は烈しくドキドキと動悸を打つ。私はそっと近寄って行って、穴の上へ首を突き出した。螺旋階段が垂直に、穴の口から下りている。その階段の尽きる辺に、一つの室があるらしく、華やかな燈火が煌々と真昼のように灯っている。そしてそこには愉快そうな沢山な人がいると見えて、唄声なども聞こえて来る……。
私はすっかり驚いて、眼を離すことが出来なかった。何んという不思議な対照だろう! 何んという信じられない光景だろう! 私の今いるこの位置は、暗黒で、人気がなくて、物凄い。