Japanische Klassiker mit Furigana
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さばくのこと
沙漠の古都
国枝 史郎
Lesen Sie 沙漠の古都 (さばくのこと) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.076 Zeichen · 220 Bildschirme
見れば、意外にも、その男は、金雀子街で姿を見せた、穢い年寄りの苦力であった。今日もやっぱり酔っている。ヒョロヒョロとあぶなそうに歩いている。
「おや!」
と、私は仰山に、驚きの声を洩らしたのである。しかし老人は見向きもせず、右の方へユラユラと行きかけたが、その時、またも、囁いた。
「ズンズン行くがいいぞ! 張教仁! 左へ左へ左へとな! 突き当りの帳をかかげるがいい……」
云ってしまうと、老苦力は銅像の影へ身を寄せた。ともうどこへ行ったものか、どう見ても姿は見えなかった。
冒険を覚悟のこの私は、苦力の言葉に従って、左へ左へ左へと、足を早めて歩いて行った。二十分あまりも歩いた時、長い廊下が行き詰まり、そこに一つの室があった。しかも扉は半ば開き、内側に垂れた錦繍の帳の色さえ見分けられた。私は少しの躊躇もせず、グッと帳をかかげると共に、室へスルリとはいったのである。
ああ、夢のような室の態よ!
ほんとに夢のような小さい室! その室を仄かに馨らせるものは、甘い阿片の匂いである。室を朦朧と照らしているのは、薄紫の燈火である。それは天井から来るらしい。天井から来る薄紫の燈火の光に照らし出されて、幽かに見える一つの寝台。