Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うたかたのき

泡沫の記

久生 十蘭

Lesen Sie 泡沫の記 (うたかたのき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.889 Zeichen · 26 Bildschirme

Aozora Bunko

La Nascita di Venere の絵、ヴィナスが乗っているあの大車渠貝とそっくりなものが置かれてあった。それは幅だけでも三メートルはあろうと思われる純金の大車渠貝で、蔓薔薇の蔓と、わずかばかりの蘆の葉で支えられ、床から三十糎ほどの高さのところにゆったりと置かれてある。つまり宙に浮いているのだが、どの蔓とどの葉が、これだけの重量を支えているのか、どうしても見極めることが出来なかった。つまり、これは王のソファなので、さまざまに度合のちがう大車渠貝のふくよかな丸みのせいで、腰を掛けるにしろ、横になるにしろ、どんな恰好でも即座に受けいれて、なんの不自由も、抵抗も、無理も感じさせないといったぐあいになっている。

試みにその上に横たわってみると、その途端に私の身体はいいしれぬ安易さ――宙に浮いているとも、物体に拘束されているともきめがたい、えも言われぬ安楽な状態になっていた。ふと眼をあげると、鏡のゆるやかな撓みが、唐突に宇宙そのもののように無限に拡大され、天心から十五度以内に、あらゆる星座が、無窮の、その癖、すぐ手の届くところに、燦然と輝いている。