Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なきむしこぞう

泣虫小僧

林 芙美子

Lesen Sie 泣虫小僧 (なきむしこぞう) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.906 Zeichen · 70 Bildschirme

Aozora Bunko

小麦色の合いの外套を引っかけた菅子の後から、啓吉は、眠た気な目をして、

「さよなら」

といって戸外へ出た。路地には風が出ていた。

十五

風が出ていて、啓吉は、歩くのがおっくうであったが、菅子の後から眠むそうにひょこひょこ歩いた。

渋谷から六つ目だかの高田の馬場で降りると、菅子のアパートは線路の見える河岸に建っていた。アパートといっても、板造りの二階建で、もうかなり歴史のある構えだ。

「啓ちゃんは、一等誰が好き?」

「…………」

「よう、誰? いって御覧よ」

菅子は赤いスリッパにはきかえて、埃のざらついた梯子段を上りながら、下から上って来る啓吉に尋ねた。

「ええ?」

「母アさん……」

「へえ……そうかねえ」

菅子はくりくりした顎の先を部屋の鍵で軽く叩きながら、母と子の愛情は、どんなに粗暴であっても、固くつながっているものだと、少しばかり感心しながら、

「啓ちゃんのお母さんは、礼子ちゃんばかり可愛がるじゃないの?」

と言った。

「…………」

啓吉は、応える言葉がないのか黙っていたが、思い出したように、小さい口笛を吹き始めた。

四人の姉妹のうち、菅子だけは学問が好きで、田舎の女学校も出ていたし、長い間、貞子の家も手伝っていて、姉の結婚生活には軽い失望も感じる程、しっかり者だった。