Japanische Klassiker mit Furigana
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るてん
流転
山下 利三郎
Lesen Sie 流転 (るてん) von 山下 利三郎 (やましたりさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.715 Zeichen · 12 Bildschirme
御親切は永く忘れません、御縁があればまたお目に懸れるでしょう。どうぞ立派な小説をお描きになりますよう、陰からお祈りしています」
「不意にお呼止めしたのを慍りもなさらないで、よく来て下さいました。ほんとうにいつか又お目にかかりたいものですね」
小村に送られて階段を降り、卓の間を縫って扉口まできたが、こんどは先刻のように怪訝らしい眼で眺める人は誰も居なかった。
扉の内と外とで感銘的な挨拶が交された。
「いろいろ有がとうございました、では御機嫌よく……」
「貴方もお壮健で……お気をつけていらっしゃい」
戸外は相かわらず紺絣を振るように、霙が風にあふれて降って、疎らに道ゆく人も寒そうに傘の下に躯を固くしながら歩いている。放浪者は腕を組合せたまま肩をすくめて、電車にも乗ろうとしないで灯影の少い街に向って消えてゆく。可惜かわした上衣の襟に袖に、降りそそぐ氷雨をまともに受けて。
「電車にも乗らないで……ひとに姿を見られるのが厭わしいのだろうか、前科者の怯目を自分から遠慮してかかっているのか?」
いつまでもいつまでも硝子扉の蔭から、その姿が見えなくなるまで見送って、こう呟いた小村はそれからやっと二階へ引返し暖炉の傍へ寄ったまま、先刻からの状景をもう一度彼の頭脳の中にくりかえして見た。