Japanische Klassiker mit Furigana
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うみにいくるひとびと
海に生くる人々
葉山 嘉樹
Lesen Sie 海に生くる人々 (うみにいくるひとびと) von 葉山 嘉樹 (はやまよしき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 161.305 Zeichen · 321 Bildschirme
、鎖が一杯になって来ると、彼は、鎖の中に危うく身を構えて、それにはさまれぬように作業しなければならなかった。これは一航海に一度でもうんざりする仕事であった。それを、彼は、昨日の朝から、二度目であるのだ。
波田は暗い顔をして、チエンロッカーへおりて行った。彼は全く、それへはいる時は地獄へおりて行くような気がするのであった。
彼はチエンロッカーについて悲惨な物語を聞いていたが、それは、いつでも彼がチエンロッカーへはいる場合に、彼の記憶の中から、ムクムクと起き上がって来ては、彼を脅すのであった。
それは一九一〇年代の事であった。英領植民地のシンガポーアの、マレーストリートとバンダストリートとの二街に、赤色煉瓦の三階建ての長屋が両側二町余にわたって続いていた。その長屋は全部日本人の娼婦のいる家であった。そこは、わが国の大都会、たとえば、横浜とか神戸とかにおける遊郭よりも、数も多く、規模もはるかに大きかった。そのころは船員はゴロツキが多かった。それはほん者のゴロツキであって、陸を食いつめた博徒などが、船乗りになっていた。そして、船長などというのもいかがわしいのが多く、これらの船員と結託しては密航婦を、シンガポーアだとか、ホンコンだとか、またはアントワープだとかの遠方までも、大仕掛けで輸送したものだ。