Japanische Klassiker mit Furigana
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うみのししゃ
海の使者
泉 鏡花
Lesen Sie 海の使者 (うみのししゃ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.811 Zeichen · 10 Bildschirme
今、汐時で、薄く一面に水がかかっていた。が、水よりは蘆の葉の影が濃かった。
今日は、無意味では此処が渡れぬ、後の橋が鳴ったから。待て、これは唄おうもしれない。
と踏み掛けて、二足ばかり、板の半ばで、立ち停ったが、何にも聞こえぬ。固より聞こうとしたほどでもなしに、何となく夕暮の静かな水の音が身に染みる。
岩端や、ここにも一人、と、納涼台に掛けたように、其処に居て、さして来る汐を視めて少時経った。
下
水の面とすれすれに、むらむらと動くものあり。何か影のように浮いて行く。……はじめは蘆の葉に縋った蟹が映って、流るる水に漾うのであろう、と見たが、あらず、然も心あるもののごとく、橋に沿うて行きつ戻りつする。さしたての潮が澄んでいるから差し覗くとよく分かった――幼児の拳ほどで、ふわふわと泡を束ねた形。取り留めのなさは、ちぎれ雲が大空から影を落としたか、と視められ、ぬぺりとして、ふうわり軽い。全体が薄樺で、黄色い斑がむらむらして、流れのままに出たり、消えたり、結んだり、解けたり、どんよりと濁肉の、半ば、水なりに透き通るのは、是なん、別のものではない、虎斑の海月である。