Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
かいりゅう
海流
宮本 百合子
Lesen Sie 海流 (かいりゅう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 35.977 Zeichen · 72 Bildschirme
「どうしましたね?」
「今日はお父様珍しいのね」
「ああ」
泰造は宏子の片方の腕をとって自身は道の外側を暫くだまって歩いていたが、やがて、
「丁度いいところで逢ったから話すがね」
おだやかな、圧しつけるところのない、寧ろ心配りで愁わしげな調子さえ響く声で云った。
「実は昨日、或る人をよこして富岡がお前へ結婚を申込んだ。富岡は、お前にもその心持がある事実をもっていると云っているそうだが――」
セイラア服の宏子は、黙りこくって頑固に自分の前を見つめて歩いた。泰造は、軽い咳のようなものをして続けた。
「儂は断ったよ。――あれはよくない。儂は来た男に、はっきり断った。いいだろう?」
宏子は髪の根に汗のにじみ出すような心地で、
「ええ」
と云った。
「おっかさんには黙っていよう、また亢奮するといけないからね」
泰造は片手で執っている宏子の腕のところを、もう一つの自分の手のひらで軽くたたいた。
「心配しないでいいよ。お前はいい娘だ。儂はお前を信じているよ。お前にはまだよく分るまいが、人間は自分のねうちというものを知らなけりゃいけない。そしてそれを大切にすることを知っていなけりゃいけない。