Japanische Klassiker mit Furigana
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かいひんいちじつ
海浜一日
宮本 百合子
Lesen Sie 海浜一日 (かいひんいちじつ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.953 Zeichen · 8 Bildschirme
行手に、そろそろ二本アーク燈の柱が見え始めた。松林がその辺で少し浜へ辷り出している。数艘、漁船が引上げられ、干されている。彼等はその辺から村の街道へ登るわけだ。跟いて来た犬は、別れが近づいたのを知ったように、盛にその辺を跳ね廻った。父の手許にとびつくようにする。父は周章てて包みを高くさし上げ体を避けようとする拍子に、ぎごちなく蹣跚いた。その身のこなしがいかにも臆病な老人らしく、佐和子は悲しかった。彼女は急いで、
「ポチ! ポチ!」
と出鱈目の名を呼び立てた。ポチは、砂を蹴って父の傍から離れると、一飛び体をくねらせ、傍の晴子の頬の辺を嘗めた。父がまるでむきな調子で、
「晴子、嘗められた」
と嫌悪を示した。それらが何だかしきりに佐和子の心を打った。平常一緒に生活していないうちに、いつか父は犬の友達ともなれぬ父となっている。
坂の上に、彼等の明るい露台が現れた。母がこっちを見て立っている。父が真先その方に向って帽子を振った。晴子は手を振った。佐和子も同じように挨拶をし、一番後から訴えどころない生活の過ぎ行く哀愁を感じつつ坂路を登って行った。