Japanische Klassiker mit Furigana
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かいじんにいのる
海神に祈る
田中 貢太郎
Lesen Sie 海神に祈る (かいじんにいのる) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.486 Zeichen · 26 Bildschirme
「お聞きになりましたか」
「何じゃ」
「今、人足が云った事でございますが」
「何と云った」
「居るとか怖いとか、口ぐちに云っておりましたが」
「あれか、あれは何じゃ」
「あれは、彼の釜礁の事でございます」
釜礁は港の口に当る処に横たわった大きな礁で、それを砕きさえすれば工事も落著するのであった。
「釜礁がどうしたのか」
「此の二三日、彼の釜礁は、竜王が大事にしておるから、とても破れない、また破っておいても、翌日になると、元のとおりになっておるとか、いろいろの事を云っております」
「そうか、そんな事を云っておるか」
これも陽の光と潮風に焦げて渋紙色になった総之丞の顔には嘲笑が浮んだ。
「しかし、今の世の中に、神じゃの、仏じゃの、そんな事が在ってたまりますものか、阿呆らしい」
権兵衛は足を停めた。
「待て待て、崎の浜の鍛冶屋の婆じゃの、海鬼じゃの、七人御崎じゃの、それから皆がよく云う、弘法大師の石芋じゃの云う物は、皆仮作じゃが、真箇の神様は在るぞ」
総之丞は眼を円くした。
「在りますか」
「在るとも」
総之丞はもう何も云わなかった。総之丞は権兵衛の精神家らしい気もちを知っていた。