Japanische Klassiker mit Furigana
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あざらしとう
海豹島
久生 十蘭
Lesen Sie 海豹島 (あざらしとう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.311 Zeichen · 48 Bildschirme
「そんなところで、のっそりしていないで、こっちへ来い」と怒鳴りつけると、狭山は小山がゆらぐように近づいてきて、食卓をへだてた向う側に突立った。
眼の前にふしぎな顔があった。前額というものがまったく欠失して、一本も毛のない扁平な顱頂につづき、薄い眉毛の下に犬のような濡れた大きな眼があった。丸い小さな、干貝のような耳がぴったりと顳にはりつき、たるんだような薄い唇がその下までまくれあがっている。顎には恐ろしい贅肉がついていて、三つぐらいにくびれて、いきなり厚い胸になっている。手足が鰭でないばかりで、膃肭獣そっくりというようすをしている。こうして向きあっているのは、たったいま海から上って来た膃肭獣なのではなかろうかという無意味な妄想につかれ、薄暗がりの中でこういう異相と向きあっているのが厭わしくなり、狭山にランプを持って来いと命じた。
狭山は足をひきずりながら炊事場の方へ行くと、七分芯のランプに灯をつけてきて※(「木+垂」、第3水準1-85-77)木の釘にひっかけ、見ていても気が焦ら立つようなのろくさいしぐさで煖炉を燃やしつけ、のっそりと私と向きあう床几に掛けた。