Japanische Klassiker mit Furigana
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かいなんき
海難記
久生 十蘭
Lesen Sie 海難記 (かいなんき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.628 Zeichen · 56 Bildschirme
前夜の騒動を参酌し、将来の危険を予想してこんな措置をとったわけだが、兵隊達は行末どんな不幸に逢うかとも考えず、身軽になりたい一心で、我勝ちに装備を捨てた。
移乗の命令が出ると、兵隊達は一斉に舷側に走り、ロープや繩梯子に縋って喊声をあげながら筏へ飛び移ったが、規律も秩序もあったものではなく、眼もあてられない混乱ぶりで、ほとんど大半が海に落ち、浮き沈みしながら押し合ったり蹴合ったりした。
艦長室の決議では、筏にはせめて食糧と水だけは及ぶかぎり、積み込むということになっていたが、主計係の怠慢から、必要のない帆布や綱具のようなものばかり投げおろした。やっと気がついて、水と、葡萄酒の樽と、二十五斤入りの乾麺麭の袋を一つ投げてよこしたが、乾麺麭の袋は見当がちがって海に落ち、引揚げたときは大きな捏粉の塊りになっていた。筏の上は身動きも出来ぬほどだったが、兵隊達はこんな不当な扱いを受けても腹もたてず、妙に従順な態度を見せ、いかめしく武装した将校と下士官に監視されながら、総督や役員の乗った舟艇がつぎつぎに艦側を離れるのを茫然とながめていた。
間もなく、ショオマレェが船首のロープを伝って端艇に移った。