Japanische Klassiker mit Furigana
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かいなんき
海難記
久生 十蘭
Lesen Sie 海難記 (かいなんき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.628 Zeichen · 56 Bildschirme
食糧としては、小麦粉十箱、淡水二樽、葡萄酒六樽、ほかに海水に濡れた乾麺麭が一袋あったが、それは最初の昼食でなくなってしまった。すぐ収容に来ると信じきっていたので、食糧を倹約することなど考えになく、四樽の葡萄酒までみなに分配してしまったのである。
漂流の第一夜は平穏ではなかった。夜になると強い風が吹きだし、暗い海の上でしきりに稲妻が閃いた。蒼白い稲妻に照しだされる海面は、見るかぎり白く泡だち、ぞっとするようなすさまじい形相をしていた。うねりの長い激浪が、波頭をそろえて息つくひまもなくおしよせ、筏を木の葉のように翻弄した。高波がうちあげてくると、兵隊達は波を恐れて右往左往し、そのたびに筏は平衡を失って転覆しかけた。後部にいた十二人ばかりの兵隊が波にさらわれた。ほかにも海に落ちるものが出てきたので、筏の上に帆綱を張りわたし、みなでそれにしがみついていた。夜半近く、海兵の一人が「海の上に火箭があがった」と叫んだ。僚艦が救助にやって来た。砲兵は急いで火薬を燃やし、将校は狂気のように空にむかって短銃を射ちあげたが、稲妻が閃きかえすほか、なんの応答もなかった。