Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かいなんき

海難記

久生 十蘭

Lesen Sie 海難記 (かいなんき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.628 Zeichen · 56 Bildschirme

Aozora Bunko

将校団のほうは企図の裏を察し、再度の暴発を未然に制圧するため申合せて、唐突に兵隊の居住区に斬りこんだ。兵隊達は将校の足をすくって押倒し、咽喉をしめ、組みついて行って野獣のように噛みついた。サヴィニ軍医補はサーベルで兵隊を斬り倒しながら、

「ゆるすな徹底的にやれ」

と下士官達を督励して歩いた。

夜が明けると、さすがに疲労して闘争はおさまった。将校下士官のほうにはただの一人も死傷はなかったが、兵隊のほうは六十名しか生き残っていなかった。筏は軽くなったが、それとともに八箱の小麦粉と二つの水樽……食糧の全部が筏の上から消え、檣に縛りつけてあった葡萄酒の樽が残っていた。自暴自棄になった兵隊が憎悪の念で理性を失い、あいつらを餓死させてやるといって海に投げこんでしまったのである。この実情は間もなくみなに知れわたったが、身から出た錆といってもあまりに覿面で、兵隊達は絶望してものをいうものもなかった。

無情な太陽がじりじりと筏の上に直射していた。食うべきものも飲むべき水もなかった。筏はたえず波に洗われているので、飢えをまぎらわすに足るものはなにひとつ残っていなかったが、それでもときどき思いがけないものが発見された。