Japanische Klassiker mit Furigana
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しせい
消えた受賞作 直木賞編
富田 常雄
Lesen Sie 消えた受賞作 直木賞編 (しせい) von 富田 常雄 (とみたつねお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.806 Zeichen · 36 Bildschirme
三日程して、次男と孫の大学生が圓月荘に来た時に、わしは重々叱って置いたが、孫は白い歯を出して薄笑いし、
「お祖父様、昔を今になすよしもがな、引揚者の合宿所にならなかっただけでも倖せです」
と、言った。
「ともかく、贅沢は許されません。決して、お父様に御不自由はお掛けしませんが、無収入状態が永く続きましたし、このインフレでは私達、旧勢力の持っていたものは全く無くなりましたし、お父様の御威光というようなものも、最早や、今日では……」
宮内省に出仕していた次男までが、袖口の擦れた洋服の膝に手を置いて、まるで、打ちひしがれた人間の態度で言った。見どころがあると思ったこの子も、四十二三歳で底が知れてしまったと思い、又、くどくど口説かれるのも肚が立つ。
「わかっておる」
わしは大きな声で言い、背を起して二人を睨み、沈黙させた。枢密院議員、宮中顧問官、従二位勲一等、伯爵白須賀克巳という肩書が、もう、ものを言わないというのであろう。そんなことを言うが、一族の者共はみな、わしの威光で今日までやって来たのだ。今更ら、時世が変わったことを楯に、贅沢は出来ぬの、昔を今になすよしもがなとか、合宿にならなかったのが倖せだったなぞと、当り前の様に言うのは、まことに恩愛を忘れたものの言い方だ。