Japanische Klassiker mit Furigana
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せいひんのしょ
清貧の書
林 芙美子
Lesen Sie 清貧の書 (せいひんのしょ) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.061 Zeichen · 36 Bildschirme
焦々した五分間であった。その辛い気持ちをお互いにざっくばらんにいえないだけに、余計焦々して私はピントを合せるのに、微笑の顔が歪みそうであった。
十二
一人になったせいであろう。昼間でも台所の部屋などは、ゴソゴソと穴蔵蛩が幾つも飛んでいた。与一が出発して九日になる。山から来た最初の絵葉書には、汽車が着いて、谷間の町の中を、しかも、夜更けて宿を探すに厭な思いをしたと書いてあった。
第二番目の葉書には、松本市五〇聯隊留守隊、第二中隊召集兵、小松与一宛と住所が通知してあった。
三番目の絵葉書は、高原の白樺が白く光って、大きい綿雲の浮いた美しい写真であった。文面には、「今日は行軍で四里ばかり歩いた。田舎屋で葡萄を食べて甘美かった。皆百姓は忙がしそうだ。歩いていると、呑気なのは俺達ばかりのような気がして、何のために歩いているのか判らなくなって来る。こうしていても、気が気でないと云う男もいた。留守はうまくやって行けそうか。知らせるがいい」こんな事が書いてあった。
私は徒爾な時間をつぶすために、与一の絵葉書や手紙を、何度となく読んでまぎらした。あの下駄はどう処分したであろうか、逞しい軍人靴をはいて、かえって、子供のように楽しんでいるかも知れない。