Japanische Klassiker mit Furigana
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しぶやけのしそ
渋谷家の始祖
宮本 百合子
Lesen Sie 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.023 Zeichen · 133 Bildschirme
私だって、もうそういつまでも、お前の世話はして上げられないのだからね、しっかりしておくれ、私がいなくならないうちに、せめて足場だけでも拵えておくれ、たのみますよ」
急に、仏壇の方へ振向いた未亡人は、最後の一句を、半ば途切らせたまま、止途もなく涙をこぼし始めた。
涙がこぼれ出すと一緒に、未亡人の感じは悉く一変した。今までは、何か陰険な、凄い、心持の悪い老婦人のように見えていた未亡人は、急に、親しい、見なれた涙脆い母親となって、正隆の前に現われたのである。
ホロホロと光って、膝に落ちる涙を眺めながら、正隆は血の気の失せた顔を引歪めた。醜いというのだか、恐ろしいというのだか、それではあまりひどすぎるという感じが、泥を口一杯突込まれたような胸苦しさで、正隆の心に迫っていた。
ほんとに、事実に、そんなのが、所謂世間なのであろうか、それほど悪意と、嫉妬と、猜疑に満ちて、食い合いをする世の中なのか?
さすがの正隆も、うんそうだ、とは思い兼ねた。疑いを挾まずにはいられないほど、母未亡人が、棒切れにかけて、挙げて見せた幕の彼方は、暗澹としていた、どこにも光明が差してはいない。