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Japanische Klassiker mit Furigana

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しぶやけのしそ

渋谷家の始祖

宮本 百合子

Lesen Sie 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.023 Zeichen · 133 Bildschirme

Aozora Bunko

けれども、それが、冷酷であるのだけは、明かな、或る一種の心持。それは、容赦なく片端から、自分の持つ希望も、幸福も、努力も、何も彼も擲(たた)き落して泥まびれにしてしまうような惨酷さ、胸が搾られるような寂寥、皮肉、利己主義、そんな感情が、皆ごちゃ混ぜになって、醗酵した心持である。

その薄ら寒い、暗い、じめじめした気分が近寄って来ると、正隆は逃げ出す力さえ失ってしまうのが常だった。

彼は淋しくなる。感傷的になる。そして、子供のように、愛撫されて泣き出したくなって来るのである。

けれども、どこに彼を泣かせてやる人がいるのか、正隆は絶望する。

老人の謡曲の師匠。老耄に近い年長者連。皆関係がない各自の生活の中に、巣喰っている。教授という位置が彼を縛って、たとい、お座なりにしろ、美くしい顔に憐れむような表情を浮べて、彼の不平に耳を傾けてくれるだろう女性にさえ、近寄れない正隆は、全く、自分の心の遣場所を持っていなかったのである。

青年が、生活の第一歩を踏み出そうとして、一滴は、必ずこぼすだろう涙。

その記録すべき深い、静かな、祈願と、憧憬と、漠然と直覚する失望に似た感じが、正隆の場合では、ただ、感傷的に傾き過ぎていた。