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Japanische Klassiker mit Furigana

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しぶやけのしそ

渋谷家の始祖

宮本 百合子

Lesen Sie 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.023 Zeichen · 133 Bildschirme

Aozora Bunko

正隆は、我儘らしく首を振った。

が、それならば、周囲にいた、あらゆる人々は、校長から給仕に到るまで、皆悪人ばかりだったのか、学生は皆、買収されていたのか、といえば、さすがに、うんそうだとも、とは云いかねる何ものかが、心の底に頭をもたげて来るのである。

小さい鉢植えの紅梅を綻ばせながら、霜除けをした芭蕉の影を斜に、白い障子に写した朗かな日を背に受けて、我ともなくうつらうつらと思索の緒を辿る正隆は、ここまで来ると何時も、闇で見た幽霊を、追懐するような、漠然たる気分になるのである。

幽霊を、きっと見たには違いない気がするのだ。若し、相貌の詳細(ディテール)を説明しろと云われれば、今直ぐにでも出来るのだ。けれども、いざ、それなら、ほんとにあそこの壁に立っていたのかと詰め寄せられると、決定的な返事には窮するような心持なのである。

そうなると、正隆の眼前に拡がった濃霧(ミスト)は一層深くなって、終には、K県に於ける農学校そのものの存在さえ、怪しくなって来るのである。秩序立てて考えて見れば見るほど、自分の立場が不思議な、自分で判断の下せないものになって来るのを感づいた正隆は、或る程度まで行くと、もうぴったりと鑿穿の足を止めてしまった。