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Japanische Klassiker mit Furigana

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とせんば

渡舟場

豊島 与志雄

Lesen Sie 渡舟場 (とせんば) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.509 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

せめて、憎悪の念を以て睨み返してやれるような者が、その中に一人でもあればよいのだが、そんな者は一人もなく、俺の方でも皆に愛想よくしなければならない。それは俺がこれまで経験しなかったことだ。軍隊生活が人間を機械化するのと同じに、こうした群居生活は、人間の精神を低俗にし平板にする。それは人間に大きく呼吸することを許さないのだ。

この雰囲気から逃避するため、俺は野をさまよい、河上に釣り舟を浮べ、町の小松屋に通って加代子に馴染んだ。当分静養するという口実のもとに、自由気儘な日を憂鬱に送った。泥酔して加代子に家まで送って来て貰うこともあった。母は加代子にも愛想がよかった。それが却って俺には不満だった。つまり、復員軍人という特権を濫用しながらも、気が晴れなかったのである。その罪を俺は群居生活の息苦しさに帰した。

そしてつい先日、三月三日の雛祭りの日は、居所が狭いので雛人形も飾らず、菱餅や白酒も手にはいらず、普通の日と同じに過ぎた。その夕方、町の小松屋へでも行こうかなと思って、河岸へ出てみると、夕日が赤くさしてる中に、芽ぐみかけた柳の木によりかかって、じっと河面を眺めてる女がいた。