Japanische Klassiker mit Furigana
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おんせんざっき
温泉雑記
岡本 綺堂
Lesen Sie 温泉雑記 (おんせんざっき) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.905 Zeichen · 16 Bildschirme
殊に東京近傍の温泉場は一泊または日帰りの客が多く、大きい革包や行李をさげて乗込んでくるから、せめて三日や四日は滞在するのかと思うと、きょう来て明日はもう立ち去るのがいくらもある。こうなると、温泉宿も普通の旅館と同様で、文字通りの温泉旅館であるから、それに対して昔の湯治場気分などを求めるのは、頭から間違っているかも知れない。
それにしても、今日の温泉旅館に宿泊する人たちは思い切ってサバサバしたものである。洗面所で逢っても、廊下で逢っても、風呂場で逢っても、お早ようございますの挨拶さえもする人は少い。こちらで声をかけると、迷惑そうに、あるいは不思議そうな顔をして、しぶしぶながら返事をする人が多い。男はもちろん、女でさえも洗面所で顔をあわせて、お早ようはおろか、黙礼さえもしないのが沢山ある。こういう人たちは外国のホテルに泊って、見識らぬ人たちからグード・モーニングなどを浴せかけられたら、びっくりして宿換えをするかも知れない。そんなことを考えて、私はときどきに可笑くなることもある。
客の心持が変ると共に、温泉宿の姿も昔とはまったく変った。むかしの名所図会や風景画を見た人はみな承知であろうが、大抵の温泉宿は茅葺屋根であった。