Japanische Klassiker mit Furigana
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こんとんみぶん
渾沌未分
岡本 かの子
Lesen Sie 渾沌未分 (こんとんみぶん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.232 Zeichen · 33 Bildschirme
さあ出かけましょう。老先生には許可を得てますよ」
小初は電燈を消して、洲の中の父の灯をちょっと見返ってから、貝原と水泳場を脱け出した。
貝原は夏中七八遍も小初を踊りに連れ出したことがあるので、ちょっとした小初の好きな喰べものぐらい心得ていた。浅夜に瀟洒な鉄線を組み立てている清洲橋を渡って、人形町の可愛らしい灯の中で青苦い香気のある冷し白玉を喰べ、東京でも東寄りの下町の小さい踊り場を一つ二つ廻って、貝原はあっさり小初の相手をして踊る。
この界隈の踊り場には、地つきの商店の子弟が前垂を外して踊りに来る。すこし馴染になった顔にたまたま小初は相手をしてやると、
「へえ、へえ、済みません」
お客にするように封建的な揉み手をして礼をいう。小初はそれをいじらしく思って木屑臭い汗の匂を我慢して踊ってやる。
ときどき銀座界隈へまで出掛けることもある。そうすると今度はニュー・グランドとか風月堂とかモナミとか、格のある店へ入る。そこのロッジ寄りに席を取って、サッパーにしては重苦しい、豪華な肉食をこの娘はうんうん摂る。貝原は不思議がりもせず、小初をこういう性質もある娘だと鵜呑みにして、どっちにも連れて行く。