Japanische Klassiker mit Furigana
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こんとんみぶん
渾沌未分
岡本 かの子
Lesen Sie 渾沌未分 (こんとんみぶん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.232 Zeichen · 33 Bildschirme
薫の弱い消極的な諦めが、むしろ悲壮に炎天下で薫の顔を蒼く白ました。
「何も、決定的な事じゃあるまいし……」と小初は云ったが語尾は他人のように声が遠のいて行った。小初は今日まで、貝原との約束をどう薫に打ち明けようか、思いなやんでいたのである。それに自分だとてまだ貝原との約束を全然決定し切れない心に苦しめられていたのであるけれど、薫の方から、云い出されてかえって小初の心はしんと静まり返ってゆくのだった。そしてだんだん虚脱に似た無批判になってゆく心境のなかにいつか涼しい一脈の境界が透って来た。父に聞いた九淵のはなし、友が訳した希臘の狂詩――水中に潜む渾沌未分の世界……「どうでもいいわ」……小初はすべてをぶん流したあとの涼やかさを想像した。小初の泣き顔の涙も乾いて遠くの葦の葉ずれが、ひそひそと耳にささやくように聞える。小初はまたしても眠くなった。
薫は腹這いから立ち上った。腰だけの水泳着の浅いひだから綺麗な砂をほろほろ零しながらいい体格の少年の姿で歩き出した。小初はしばらくそれを白日の不思議のように見上げていた。小初は急に突きのめされるような悲哀に襲われた。