Japanische Klassiker mit Furigana
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げんおじ
源おじ
国木田 独歩
Lesen Sie 源おじ (げんおじ) von 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.455 Zeichen · 23 Bildschirme
「わが子よ」嗄がれし声にて呼びぬ。答なし。窓を吹く風の音怪しく鳴りぬ。夢なるか現なるか。翁は布団翻のけ、つと起ちあがりて、紀州よ我子よと呼びし時、目眩みてそのまま布団の上に倒れつ、千尋の底に落入りて波わが頭上に砕けしように覚えぬ。
その日源叔父は布団被りしまま起出でず、何も食わず、頭を布団の外にすらいださざりき。朝より吹きそめし風しだいに荒らく磯打つ浪の音すごし。今日は浦人も城下に出でず、城下より嶋へ渡る者もなければ渡舟頼みに来る者もなし。夜に入りて波ますます狂い波止場の崩れしかと怪しまるる音せり。
朝まだき、東の空ようやく白みしころ、人々皆起きいでて合羽を着、灯燈つけ舷燈携えなどして波止場に集まりぬ。波止場は事なかりき。風落ちたれど波なお高く沖は雷の轟くようなる音し磯打つ波砕けて飛沫雨のごとし。人々荒跡を見廻るうち小舟一艘岩の上に打上げられてなかば砕けしまま残れるを見出しぬ。
「誰の舟ぞ」問屋の主人らしき男問う。
「源叔父の舟にまぎれなし」若者の一人答えぬ。人々顔見あわして言葉なし。
「誰れにてもよし源叔父呼びきたらずや」
「われ行かん」若者は舷燈を地に置きて走りゆきぬ。