Japanische Klassiker mit Furigana
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しおかぜ
潮風
豊島 与志雄
Lesen Sie 潮風 (しおかぜ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.018 Zeichen · 25 Bildschirme
俺は本当に呆れかえった。そして三十分間ばかり、二人は抱きあったまま、低くとぎれとぎれに、べらぼうなことを囁いたり返事したりして、でも最後の一線はふみこえないで、片野さんは立ち上った。書きちらした紙片をポケットにねじこみ、靴をちゃんとはき、裏口の戸を佐代子にあけてもらって、外に出ていった。佐代子はその後ろ姿を見送って、ちょっと空を仰いだ。雨雲が切れて、うすく月の光がさしてる気配だった。
俺はふと思い出して、二階にあがってみた。芳枝さんは酔い疲れて眠っていた。それは俺の気に入った。
翌日、佐代子は風邪のきみだといって一日寝ていた。片野さんのことについては、あれから急な用事を思い出したとかで帰っていった、ということきり芳枝さんは聞き出し得なかった。彼女は何度か佐代子の薄暗い三畳の室にはいっていったが、大して病気でもなさそうだった。
俺が時々そっと覗いてみたところでは、佐代子はただやたらにぐうぐう眠っていた。
一日寝てた後で、佐代子は元気に起き上って、忠実に働きだした。拭き掃除から後片付まで、美智子の分までも自分でした。客にも丁寧だった。ただ何となく無口になっていた。