Japanische Klassiker mit Furigana
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かそうこくふうけい
火葬国風景
海野 十三
Lesen Sie 火葬国風景 (かそうこくふうけい) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.334 Zeichen · 37 Bildschirme
それはこの喫茶店に、露子という梅雨空の庭の一隅に咲く紫陽花のように楚々たる少女が二人の間に入ってきたからであった。
「鼠谷さんは、そりゃ親切で、温和しいからあたし好きだわ」
と朋輩にいう露子だったが、また或るときは
「甲野の八十助さんは、明るいお坊ちゃんネ。あたしと違って何の苦労もしてないのよ、いいわねエ」
とも云った。
昨日の親友は今日の仇敵となり、二人は互に露子の愛をかちえようと急ったが、結局恋の凱歌は八十助の方に揚がった。八十助と露子とが恋の美酒に酔って薔薇色の新家庭を営む頃、失意のドン底に昼といわず夜といわず喘ぎつづけていた鼠谷仙四郎は何処へともなく姿を晦ましてしまった。そのことは八十助と露子との耳にも入らずにいなかった。流石に気になったので、探偵社に頼んで出来るだけの探索を試みたりしたが、鼠谷の消息は皆目知れなかった。これは屹度、人に知れない場所で失恋の自殺をしているのかも知れないと、二人は別々に同じことを思ったのだった。
ところがそれから三年経って、八十助は妙な噂を耳にした。それは鼠谷仙四郎が生きているというニュースだった。しかも彼は、同じ東京の屋根の下に、同じ空気を吸って生きていたのである。