Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はいいろのきおく

灰色の記憶

久坂 葉子

Lesen Sie 灰色の記憶 (はいいろのきおく) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.588 Zeichen · 132 Bildschirme

Aozora Bunko

「ママはおうちに居ないの」

と訴えたことがあった。しかし、その物悲しい表情というのは、あきらかにジェスチャーであり、母に対する思慕など、少しもなかった。かえって家に居ない方が、自由に遊ぶことが出来てよいのである。

母をますます愛さなくなった原因がその頃又一つ起った。二階の御納戸に、あけしめするのにギイーッとなるたんすがあり、その中に紺地にうさぎの絵のついた御召があった。母は時折それを着た。たしか冬頃着ていたようだから――というのは、その上に黒い羽織をはおると兎が一匹みえなくなるのを悲しく思っていたからである――袷だったのだろうか、それを私は大へん好んでいた。そうして、「ボビが大人になったら、そのおめしものいただくのよ」

と姉や乳母に度々宣言した。母も、約束してくれていた。ところがいつの間にか、その着物がなくなってしまった。母はそれを着ないのである。そっと、ギイーツとたんすをあけてみたけれど、中にはいっていない。或日、私は母にたずねてみた。

「あああの御召もの、あれは、カザリイン先生がアメリカへ帰られる時さしあげたの」

母は何気なくそう云った。カザリイン先生は幼稚園の園長さんだった。