Japanische Klassiker mit Furigana
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てんきぼ
点鬼簿
Lesen Sie 点鬼簿 (てんきぼ) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.345 Zeichen · 9 Bildschirme
三
三
僕は母の発狂した為に生まれるが早いか養家に来たから、(養家は母かたの伯父の家だった。)僕の父にも冷淡だった。僕の父は牛乳屋であり、小さい成功者の一人らしかった。僕に当時新らしかった果物や飲料を教えたのは悉く僕の父である。バナナ、アイスクリイム、パイナアップル、ラム酒、――まだその外にもあったかも知れない。僕は当時新宿にあった牧場の外の槲の葉かげにラム酒を飲んだことを覚えている。ラム酒は非常にアルコオル分の少ない、橙黄色を帯びた飲料だった。
僕の父は幼い僕にこう云う珍らしいものを勧め、養家から僕を取り戻そうとした。僕は一夜大森の魚栄でアイスクリイムを勧められながら、露骨に実家へ逃げて来いと口説かれたことを覚えている。僕の父はこう云う時には頗る巧言令色を弄した。が、生憎その勧誘は一度も効を奏さなかった。それは僕が養家の父母を、――殊に伯母を愛していたからだった。
僕の父は又短気だったから、度々誰とでも喧嘩をした。僕は中学の三年生の時に僕の父と相撲をとり、僕の得意の大外刈りを使って見事に僕の父を投げ倒した。僕の父は起き上ったと思うと、「もう一番」と言って僕に向って来た。