Japanische Klassiker mit Furigana
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むげつものがたり
無月物語
久生 十蘭
Lesen Sie 無月物語 (むげつものがたり) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.485 Zeichen · 36 Bildschirme
保嗣が急に浪花へ下ったのは、朝霞が細工して追いだしたのだと一図に思いつめ、うらめしさのあまり、月のない夜、保平が朝霞の曹司へ忍んでくるとか、朝霞が夜の明けるまで保平を離さないとか、あることないことをしつっこく泰文に告げ口した。
泰文のほうはそのころ新たな恋の悦楽にはまりこんでいた。相手は敦賀の国府にいた貧乏儒家、藤原経成の娘の公子という女歌人で、父について敦賀に下っていたが、急に京へ帰ることになり、敦賀ノ庄を出た日から泰文の道連れになった。
公子は天平時代の直流のような肉置きのいい豊満な肉体をもった、情操のゆたかな聡明な女で、当代のえせ才女のように些細な知識を鼻にかけて男をへこます軽薄な風もなく、面白ければ笑い、腹をたてれば怒るといった淀みのない性質だった。泰文は一人の女だけに深くかかりあうような無意味な所為をしない男だが、公子にはすっかりうちこんでしまい、参殿の行き帰りに、なにかと口実をつくって公子の家の前で車をとめた。そういう事情から泰文の気持が浮きあがっているので、薹のたった古女房などはどうでもよく、白女のいうことなどは、身にしみて聞いてもいなかった。